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lol
万珍楼
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このタイトルは手塚治虫氏が1987年の6月から1989年の2月まで
「コミックトム」(潮出版社)に連載 していた作品のもので
これは1989年2月9日に亡くなられた手塚氏の絶筆であり
未完の大作となったものです。
手塚氏はもともとクラシックが大好きだったということで
晩年はモーツァルトの「魔笛」をアニメ化しようと考えていたりしたようですが
この絶筆となった「ルードウィヒ・B」はモーツァルトと並ぶ大作曲家
ベートーヴェンの生涯を描いた作品となるものでした。
もっともそこにはただその生涯を漫画にしようとしただけでなく
フランツ・フォン・クロイツシュタイン伯爵という
ベートーヴェンの8歳年上のこの作品のオリジナルキャラを登場させ
時代に翻弄されながらも、ベートーヴェンの人生と運命に深く関わらせることにより
その生涯をより劇的なタッチに仕上げ
より人物像に肉薄していこうという感じの作品にしようとしていたようで
読んでいてかなり読み応えのある作品となっています。
ですがこの作品
そのストーリーの面白さだけでなく
ベートーヴェンがモーツァルトやハイドンといった人たちを前にピアノを弾く描写
これがとにかくあまりにも素晴らしい。
これは自分の持っているこの本の後書きに
萩尾望都さんも触れていらっしゃるのですが
(※自分の所持しているものは1989年8月に追悼出版されたものです。)
とにかく漫画という音が発せられないものにもかかわらず
その絵の表現力によって
音楽そのものがもつ響きが聴き手にもたらす体感のようなものを感じさせるという
ほんとうにとんでもないことがこの作品では行われているのです。
しかもそれが圧倒的な存在感をもって迫ってくるのですから
これに驚かないものがこの世にいるのかというくらい
とにかくこの部分の凄さというか
手塚氏の凄まじいまでの没我と大解放の強大なエネルギーが
ベートーヴェンのそれと恐ろしいくらい波長を一致させながら
ひたすら読み手(もしくは聴き手)をぐいぐいのめりこませていくあたりは
何度読んでも圧倒されつくしてしまうほどの感銘を自分は常に受け続けています。
バッハの平均律におけるシーンしかり
シュターケル僧院長の前での演奏でのシーンしかり
そして全編に何度も出てくる(僧院長のシーンもそうですが)
変奏曲におけるベートーヴェンの桁外れの天才的爆発力の描写等々
こんなことが漫画で可能なのかと
初めて読まれると一瞬とまどってしまうほどのものがあると思います。
ですが残念ながらこの作品は最初に申し上げましたとおり未完です。
ビデオカメラの話などがかなり異色なものとはなっていますが
「第九」や「田園」そして「月光ソナタ」の伏線となる話が登場し
まもなくあの「ハイリゲンシュタットの遺書」や
ナポレオンと交響曲「英雄」の話へといよいよ話が佳境に突入する寸前での絶筆
ほんとうに無念だったと思いますし、
伯爵にとってあの育てようとした赤子はいったい将来どういう運命の子となっていくのか?
さらに伯爵の生まれた5月がベートーヴェンが亡くなる月と同じなのは何故か?
(また伯爵の生まれたときを「5月の風がやさしい香りをまいていき」と描写されていたのは
ベートーヴェンの亡くなった日の5月が雷鳴轟く荒天であったことへの対比であったのか?)
そしてラストシーンでのベートーヴェンの決断は?
とにかくこの作品は
巨匠が楽聖の許へと旅立ったため上記したすべて
そしてその結末のつけかたも未来永劫謎となってしまいました。
おそらく現在自分達がみているこの作品は
全体の1/3(ひょっとしたら1/4)くらいではないかと思います。
それはこの話がまだ19世紀になっていないことと
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』におけるベートーヴェンの項
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3
をみていただいても容易に想像がつくと思いますし、
それ以上にまだあの不滅の九つの交響曲がまだ明確には一曲たりとも登場していないということが
まだまだ話はこれからということをさらに強く感じさせるものがあります。
ルードウィヒ・B
手塚治虫氏の未完の絶筆にして壮大な交響詩。
そして漫画でしかなしえない手法により
ベートーヴェンに迫っていった空前の大傑作(となるはずだった)。
自分は手塚治虫氏のけっして熱心な読者ではありませんが
その自分をしてここまで熱狂させたこの作品。
もし機会がありましたらぜひご一読をお薦めいたします。
最後に今気づいたのですが
この作品には手塚作品によくあらわれる他の作品の出演者(ひげおやじ他)どころか
あのヒョウタンツギすらでてきません。
遊び無しで一分一秒も惜しみ
それはこの作品に自分のすべてを全力かつ最速で注ぎ込んでいたからなのかもしれませんし
ある意味自分のまもなく生命の火が燃えつきる瞬間までの
時間との凄絶な死闘のあらわれだったのかもしれません。
はじめまして。
私も大好きな作品です。
続きが読めなくて本当に残念です。
by 万珍楼 (2006-01-14 18:41)
万珍楼 さま
コメントだけでなくnice! までいただきありがとうございました。
ほんとうに残念ですね。
二十代のベートーヴェンをこれだけ克明に描き
しかもいくつかの伏線もあらわれていただけに…。
by あいざーまん (2006-01-14 22:13)
万珍楼さんのnice一覧から気になるタイトル!てことで来たんですが、
私も非常に感動した作品です。
手塚作品は作風や方向が様々で、好きなものは数々ありますが、
この作品はやはりちょっと特別ですね・・・・・
本当に本当に未完なのが残念でなりません・・・・・・・・・(´・ω・`)
最後の部分を読みながら、月光をかけて、泣きます、いつも。
by (2006-05-13 13:05)
lol さま
自分は手塚作品をそれほど読んでいませんが
>ちょっと特別
というのはわかる気がします。
それにしてもこの作品の音楽に対する描写力!
もし完成していたら例えば最晩年の
ベートーヴェンの生涯で熱狂&創作力が究極的にまで極まった
弦楽四重奏曲第14番などはいったいどう描写されたのか
ほんとうに返す返す残念です。
コメントとnice、ありがとうございました。
by 阿伊沢萬 (2006-05-13 23:34)