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「この世界の片隅に」雑感。 [劇場公開アニメ]

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ようやくこの作品を見た。

公開してずいぶん経つのになんで今頃と思われるかもしれないが、
この映画をどうしても見たいところが、
12/24からの上映だったためこうなってしまった。


「シネマ・ジャック&ベティ」

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京浜急行「黄金町」駅から歩いて数分の所にある、
昭和の雰囲気を色濃く残した映画館。

以前もここに来て、
そのなんともいえない雰囲気が気に入っていたので、
この作品をみるならぜひここでと決め打ちしていた。


だがこの満員にならないことが売りの映画館で、
この作品だけは満員札止めを連発、
これまたなかなかな見ることがかなわなかった。


で、今回ようやく見れたが、
開演二十分前に補助席のみの販売で、
しかも自分が購入して五分も経たないうちに満員札止めとなってしまった。

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気づいてみれば興行収入十億というヒット作になったのだから、
さすがのここでもそれは当然の事だったのだろう。

因みにここの補助席は両サイドの通路に、
丸椅子がおいてあるというそれだったけど、
お尻に少しくるものの、
前の人の頭が気にならないので、
ちょっとした通路側席みたいなかんじで、
しかも壁に肩をもたれることもできたので、
意外と悪くない…というより個人的にはこちらの方が美味しい席だった。


そして本編。

余計な予告編もなくすぐに始まった。


結論から言うとこれはホームドラマだ。

ただ舞台が昭和8年から21年初めにかけての広島ということで、
今の時代とは状況も環境もあまりにも違う。

だけど当時はそれが日常だった。

そんな中を主人公が八歳から二十歳すぎまで、
あるときは翻弄されあるときは穏やかにと、
ひとつの日常を過ごしていく。


たしかに食料は少なく、
空襲も激しく、
多くの人たちが亡くなっていくものの、
それらもまた日常として描かれて行く。


その後主人公にも不幸がいくつも襲う、
だがここでもそれを声高に描いてはいない、
ひとつの事実がひとつのありさまとして淡々と描かれて行く。


もちろん主人公の感情が大きく振り切れる時もある。

だけどこの映画はそれをあくまでも一歩ひいた、
それでいてどこまでも温かな眼差しを主人公につねにむけながら、
それらをしっかりと正面からみつづける姿勢を貫いている。

その姿勢はこの映画全体にももちろん貫かれている。

このためたしかにこれはホームドラマかもしれないが、
ひとつのドキュメンタリーという要素も兼ね備えている。

つまり多くの事柄が事実に即し、
そして忠実に再現されていることで、
それらがかつてあった「事実」の連続体となり、
結果ドキュメントの要素も色濃く備えたものになっていった。


ここの部分がしっかりしているからこそ、
自分達もみていて、よりこの主人公や周り人たちに、
強く感情を移入できたのかもしれない。


それにしても本当によくこの当時が描かれている。

自分はここで描かれた時代より二十年ほど後の記憶が、
もっとも古い記憶として残っているのみで、
この時代の事はもちろん経験したことなどない。


だけどそれでも自分の家族や親戚からかつて聞いたことと、
かなりの部分が重なっていたこともあり、
あらためてそこの部分を思い起こさせられたものでした。

特に主人公を激しく責めた憲兵が、
あの時代なのになぜ太っている人がいたのかということも、
自分はその理由のいくつかを聞いたことがあり、
それもまたこの映画で再認識されられたものでした。


映画はこのようにほとんど事実の積み重ねの中を、
主人公が歩む架空のストーリーが進行するも、
ただそれもまた事実をベースにしているため、
何か実際の日記や伝記を基にしたように感じられるが、
一部に多少幻想的な描き方も含ませることで、
それらのものとはギリギリの所で違いをみせている。


特に最初と最後にでくる化け物が、
この映画を、

「これはあくまでも物語ですよ」

というための、
ひとつの狂言回しのような役ででくるが、
それもまた一役かっている。

ただここの部分は
「千と千尋」にでてきたトンネルのような役割も、
ここではかねていたのかもしれない。


最後主人公がこの映画のタイトルを口にする。


確かに世界の中からみれば、
自分達はその中心から離れた目立たない所にいるのかもしれないが、
そのとき主人公たちの空の上に広がる夜空をみたとき、
この映画のテーマのひとつが初めて見えたように、
なんとなくだが感じられた。

そして時代に流され続け多くのものを失った主人公が、
これからは自分自身の意志で歩いていこうとする、
そんなもうひとつの日常の物語がここから出発するであろうことも。


とにかく考えさせられることとはちょっと違う、
とてもいろいろと感じられるものがあった。

そしてあたりまえの話ですが、
今が平和であることがつくづくありがたいことだと強く感じた。

いかに世界の片隅にあっても、
戦争は我々を見逃してはくれないのですから。



できればこの映画を、
日本だけでなくいろいろな地域や国でも上映してほしいものです。



映画が終わり外を出た。

入る時も感じたが。
同じ話題作でも「君の名は」とは違ってかなり年配の方が多い
中には戦時を知っているような方が夫婦連れ添ってご覧になっていた。
終演後どのような話をされていたのだろう。



最後にこの映画のパンフレット。


正直年齢層が高い人がけっこう鑑賞され、
また作者も戦争体験のある人にみてほしいというわりには、
字が少々小さく詰め込みすぎという気がする。

このあたりもう少し配慮が欲しかった。

氷川さんが一生懸命いろいろと書かれていたが、
内容的なものを考えると余計そう強く感じられた。


また、
言いたいことが胸いっぱいあるものを、
強く抑制しつつ、
かつじっくりと描きつくしながら、
ある意味行間の美しさようなものを湛えていた作品に比べ、
年表やイラストなどはしっかりとしていたものの、
このあたり少々言いたいことを無理して詰め込みすぎた感がある。

それはこの作品のもつ穏やか流れに比して、
少々異質なものに感じられてしまった。

このあたり少しだけでもなんとかならなかったものだろうか。

このパンフレットをつくる側の、
強い思いの丈からきたことはわかるのですが…。


尚、今回、晴美を演じられた稲葉菜月さん。

「アナと雪の女王」でアナの幼少期の声をされた方だが、
この映画公開時11歳。

できればこの人にこそ、
この映画の感想をこのパンフの中に、
収録しておいてほしかった。
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阿伊沢萬

とてもいい映画でした。ただいつも話題作ならたいていやっている横浜の大きな映画館では、まったく上映されないのがほんとうに不思議。今回「ジャック」が上映する話が無ければどこで見ようかと困るところでした。

ハムサブロー さま、nice! ありがとうございます。
by 阿伊沢萬 (2017-01-09 16:44) 

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