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イッセルシュテットのベートーヴェンの7番 [クラシック百銘盤]

ハンス・シュミット=イッセルシュテットという名前は、
今の若い世代の方にどううつっているのだろうか。

1900年生まれというから、
19世紀最後の年に生まれたベルリン生まれのドイツの指揮者で、
いくつかの録音によって日本でも知られていた指揮者だったが、
戦後はハンブルクの北ドイツ放送響の母体オケを創設、
ドイツを中心に活動をしたにもかかわらず、
あまり継続的なレコーディングに恵まれなかったためか、
日本では地味な存在の指揮者となっていった。

だが1958年からバックハウスのピアノによる、
ベートーヴェンのピアノ協奏曲全集の指揮者に抜擢され、
ウィー・フィルを指揮した頃からまたよく知られるようになる。

だがそれも一時的なもので、
デッカとはそれ以降録音が途絶えてしまう。

この後も録音が散発的にはあったものの、
当時は各大手メーカーがカタログを増やすために、
大量な音盤が次々と発売されていた時期にも重なり、
彼の録音はあまりとりたてて話題になることはなかった。


だがデッカによって1965年にはじまった、
ウィーンフィル初のベートーヴェン交響曲全集の指揮者に任命されたことで、
彼の名前は急速に知られそして注目されるようになった。

ただ日本ではその前年の1964年に初来日し、
好評を博していたことで、より知られた存在となっていた。

その時の来日公演は、

読売日本交響楽団

10月14日:東京文化会館
モーツァルト/交響曲/第31番「パリ」
ヘンツェ/舞踏音楽「ウンディーネ(水の精)」組曲第2番
チャイコフスキー/交響曲第4番

10月16日:厚生年金会館
シューベルト/交響曲第7番「未完成」
Rシュトラウス/ドン・ファン
ブラームス/交響曲第1番


大阪フィルハーモニー交響楽団

10月23日:フェスティバルホール
モーツァルト/交響曲第41番「ジュピター」
エック/フランス組曲
ベートーヴェン/交響曲第5番


というものだった。


これをみてもお分かりのように、
彼の得意とした二つの柱、
モーツァルトとブラームスがすべての日に一曲演奏されている。

彼の本領はこの二人の作曲家だったとよく言われており、
実際この翌年には、
若きアシュケナージとモーツァルトの協奏曲を録音している。


ただこの二人の作曲家は、
当時まだこのあたりを得意としていたベームやクレンペラー、
さらにはカラヤンやセルあたりも活発に録音演奏し、
N響にも後に同オケの名誉指揮者となったカイルベルトが客演して、
このあたりを指揮し放送されていたせいか、
その陰に隠れてしまっていたことは否めない。


そんな中1965年から1969年にかけて、
イッセルシュテットはウィーンフィル初のベートーヴェン交響曲全集を完成させ。
翌1970年のベートーヴェン生誕200年記念の目玉として発売された。


さらに同年12月には再来日し、
再び読売日響の指揮台に立った。

12月8日/厚生年金会館ベートーヴェン荘厳ミサ
12月11日/厚生年金会館ベートーヴェン荘厳ミサ
12月16日/日本武道館ベートーヴェン交響曲第9番

という日程だったはずだが他の公演日もあったかもしれない。


この公演はたいへんな評判と高い評価を受け、
当時読響の団員だった方が後に、

「あれは素晴らしい公演だった。」

と話されていたように、
当時読響創設史上最高の演奏だったとの評価すらあり、
後には1977-78のチェリビダッケの公演や、
1990年のクルト・ザンデルリンクの公演と並んで、
読売日響の歴史的名演と言われただけでなく、
日本のオケ史上まれにみる超名演だったとさえいわれている。


そんなイッセルシュテットがその来日の前年、
1969年にベートーヴェン全集の最後に録音したのが交響曲第7番。

この全集、
交響曲第8番がワインガルトナー以来の、
同曲最高の名演と突出した評価を得ているが、
個人的にはこの7番も極めて素晴らしい演奏だと思っている。

UCCD-9613.jpg

この7番より四年前の1965年、
全集最初に録音された「英雄」と比べると、
指揮者の円熟がこの間に深まったことも聴きとることができる。

だがこの全集は数年後に同じウィーンフィルがベームの指揮によって、
ベートーヴェン全集を出したことによりその陰に隠れてしまい、
さらに7番に至ってはカルロス・クライバー指揮の同曲が、
発売されて時が経つにつれ大きな評価を得ていったため、
バーンスタインとウィーンフィルによるベートーヴェン全集が出たころには、
ほんとうに過去の録音という感じになってしまった。

しかも指揮者のイッセルシュテットも三度目の来日を果たすことなく、
1973年5月に、指揮者としてはまだまだこれからという時期に急逝したため、
さらにそういう印象に追い打ちをかけてしまった。
これは本当に不幸なことだった。


余談だがデッカは1950年代末から1969年まで、
この7番をウィーンフィルで、
ショルティ、カラヤン、アバド、イッセルシュテットと録音、
グラモフォンにウィーンフィルが移籍してからも、
ベーム、クライバー、クーベリック、バーンスタインと、
二十年ほどの間に8人もの指揮者で録音を残している。


だがそれでもイッセルシュテットのこの7番、
やはりこれも名演だ、
しかも超のつく最高級の演奏だ。

演奏としてはクライバーのようなキレや新鮮さとは真逆の、
重厚でベームより重心の低い、
それでいて端正でしっかりとしたリズムをもって進められるため、
鈍重といった感がまったくといっていいほどない、
とにかくオーソドックスなスタイルの演奏といっていいだろう。

しかもティンパニーがオケにうまくブレンドさせながら、
やや硬めでしっかりと打たれているため、
ウィーンの明るいオーケストラの音に、
北ドイツ風ともいえるような打ち込みが加わるという、
聴きようによってはかなり腹の座った演奏となっている。

またオケの張りと光沢が素晴らしく、
美麗というのとはまたちがった、
じつに落ち着いた、
それこそ総檜造りと形容したくなるような質感が随所にあり、
オケの音を聴いてるだけでもほれぼれとしてしまう。

それに音楽の活気というか熱気もあり、
没我の状態で荒れ狂い、
聴き手を熱狂させるということは皆無だが、
聴いていて思わず力が入ってしまうという、
そういう内側に強い力を秘めた、
内的に強靭さと熱気を秘めた演奏となっている。

なるほどこんなかんじの演奏を、
日本でやったらそれは歴史的な演奏と言われて当然と、
そんな感じの出来になっている。

演奏時間は、
13:11、10:14、8:24、9:22
比較的オーソドックスなタイムといえるだろう。


一見淡々としていて面白味は少ないかもしれないが、
内側に素晴らしいほどに強い力を込めている、
何度聴いても飽くことのないイッセルシュテットの7番。

もし聴く機会があったらぜひ耳にしてほしい演奏です。


そしてこの演奏スタイルがベストの形で引き継がれた、
バンベルク交響楽団と1972年に録音された、
モーツァルトの交響曲第31番と35番。

そして亡くなる数日前の1973年5月に録音された、
コンセルトヘボウを指揮しブレンデルと共演した、
ブラームスのピアノ協奏曲第1番も、
ぜひ耳にしてほしい名演です。


特に後者の第二楽章は、
この指揮者の白鳥の歌ともいえる、
清澄の限りを尽くした演奏となっています。


ハンス・シュミット=イッセルシュテット、
今一度顧みられてほしい指揮者ですし、
このウィーンとのベートーヴェン7番も、
一人でも多くの方に聴いてほしい演奏です。

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コメント 3

サンフランシスコ人

イッセルシュテットのLP....大変懐かしいですね....
by サンフランシスコ人 (2017-01-31 08:29) 

阿伊沢萬

YOUTUBEにもあるようです。https://www.youtube.com/watch?v=CLSDJVsvQSM

地味な話題にコミックン様、nandenkanden様、nice! ありがとうございます。
by 阿伊沢萬 (2017-01-31 21:47) 

阿伊沢萬

イッセルシュテットはLP時代はあちらこちらでみかけたのですが、最近はあまりみかけなくなってしまいました。

協奏曲を含めて8枚くらいしか国内盤は出ていないようです。ベートーヴェンの交響曲も歯抜けで5曲が分売されているだけのようです。これも時代なのでしょうか。
by 阿伊沢萬 (2017-01-31 21:52) 

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