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ヴェルディの大失敗オペラの名盤。 [クラシック百銘盤]

作曲家には失敗はつきもので、
それで潰れたり埋もれてしまう人もいる。

大作曲家と言われる人も例外ではない。

初演で失敗を経験した人はかなりいる。

ブルックナーは交響曲第3番で、
ラフマニノフは交響曲第1番で、
チャイコフスキーは「白鳥の湖」で、
プッチーニは「蝶々夫人」で、
ビゼーは「カルメン」で
といった具合に。


ただとにかく上記した曲は、
皆それぞれのジャンルで今でも演奏されているし、
一部は人気レパートリーとなっている。

ただ中にはそうはいかなかった作品もある。

それがヴェルディが二十代後半に書いた、

「一日だけの王様 (偽のスタニスラオ)」

という、なんとも邦題だけでもピンと来ない名前の作品。

イタリアの大作曲家ヴェルディは、
「椿姫」の初演で失敗したというが、
どうも事実はそうではなかったらしく、
実際はかなり好評だったとか。

だがこの作品は正真正銘初演はダメだったらしい。

自分がこの作品を知ったのは、
同じヴェルディの「ファルスタッフ」を知った時。

自分は決してオペラが好きな方ではないが、
それでも少しは聴くし、
かつてはかなりいろいろと聴いていた。

ただその入り方は「カルメン」や「椿姫」のような、
比較的一般な入り方ではなく、
まず「こうもり」そして「ファルスタッフ」から入るというもの。

これは自分が悲劇は嫌いなのと、
あまり長い作品と相性が良くない事が理由としてあるのですが、
その「ファルスタッフ」の時にこの「一日だけの」という名前を知った。

その時「ファルスタッフ」が本人にとって、
じつに半世紀ぶりの喜劇であり、
その半世紀前の喜劇が大失敗だったことが、
本人を喜劇から遠ざけたということが解説に書いてあった。

なので自分も当時はその程度の作品という認識で終わってしまった。

だがそれから年月が経ち、
近年失敗作と初演時に言われてものでも、
後々聴き継がれている曲に数多く出会った事で、、
ちょっとこの曲が気になりだした。

そしてある時見かけたのが、
アルフレード・シモネット指揮、
ミラノ・イタリア放送交響楽団によるCD。

51iPUth8IbL.jpg

レナート・カペッキ - (バリトン)
[カヴァリエーレ・ベルフィオーレ/騎士、偽のスタニスラオ国王]

セスト・ブルスカンティーニ - (バリトン)
[ケルバール男爵]

リーナ・パリューギ - (ソプラノ)
[ポッジョ伯爵夫人]

ラウラ・コッツィ - (メゾ・ソプラノ)
[ジュリエッタ]

フアン・オンシーナ - (テノール)
[エドアルド]

クリスティアーノ・ダラマンガス - (バス)
[ロッカ]

マリオ・カーリン - (テノール)
[イヴレア伯爵]

オッタヴィオ・プレニツィオ - (バス)
[デルモンテ]

ミラノ・イタリア放送合唱団
ロベルト・ベナーリオ - (合唱指揮)
ミラノ・イタリア放送交響楽団
アルフレード・シモネット - (指揮)

録音が1951年という事で古かったけど、
歌手にブルスカンティーニがいるという事と、
かなりのお徳用価格だったのでついつい購入した。


だが帰宅後、
あらためて中のライナーの録音年月日をみて驚いた。

1951年1月25日。

ヴェルディ没後50年の日を二日後に迎える日だった。

この50回目のヴェルディのご命日は、
当時のイタリア三大指揮者も各地で指揮台に立っていた。

トスカニーニはカーネギーホールで、
シエピやステファーノといった歌手を迎えての、
ヴェルディのレクイエムを。

デ・サバータはミラノのスカラ座で、
テバルティ、プランデッリ、ロッシ・レメーニを迎えて、
同じレクイエムを。

セラフィンはナポリのサンカルロ劇場で、
カラスとラウリ=ヴォルピを迎えて、
イル・トロヴァトーレの公演を。

それぞれ指揮するといった具合だった。

そんな特別な日の二日前にこの「一日だけの」は収録された。

(※因みにこの時管弦楽を担当したミラノ・イタリア放送響は前年発足したばかりで、当時は初代指揮者のジュリーニが首席を勤めていた)


後で知ったけど、これはラジオ放送の為の収録だったらしい。
おそらくこの特別な日の当日、もしくは前後に放送されたのだろう。

音質は意外な程よく、
オケや合唱はやや奥にいる雰囲気だけど、
歌はその分前面に出ていて素晴らしく明瞭に録られている。

その歌手は
ブルスカンティーニ、カペッキ、パリューギといった、
イタリアオペラに詳しい方なら、
かなり気になるであろう面子が揃っている。

尚バリューギはこの録音の数年前に、
四十歳で舞台を引退していたということで、
この時期はこういう放送録音での活動が主だったとか。

確かにそのせいかちょっと音程で?という所もあるけど、
その声がとてつもなく可愛いらしく、
ほとんどアニメ設定の伯爵夫人ではないかというくらい。

あとブルスカンティーニとカペッキは安定していて、
特にブルスカンティーニはなかなか強烈な男爵を演じている。

若き日のオンシーナも、
ロッシーニ等のオペラで定評があったということで、
ここでの役もピタリとはまっている。

コッツィは詳しい事はまるで分からないけど、
こちらも自分にはしっかりと演じているように感じられた。

ただこの人とパリューギは、
放送録音のように舞台と無関係の場合は、
逆にやった方が聴く分にはしっくりいってたような気がする。

後にカラヤンやスカラ座の録音でも有名になった名合唱指揮者、
ベナーリオの指揮による合唱も録音のハンディはあるが、
かなり精彩に富んだものに聴こえる。

そして指揮のシモネットもなかなか勢いと歯切れのある演奏で、
この作品を聴き応えのあるものに仕上げている。


この作品はヴェルディ二十代後半の作品だが、
当時作曲者はかなり辛く厳しい経験をしており、
仕事とはいえよく作曲を、
しかも喜劇を書けたものだと正直驚いてしまう。

それでしかも失敗したのだからその傷心は半端ではなかったろうし、
当時ロッシーニやドニゼッティの亜流みたいな、
そんな言われ方までしたらしいのたから尚更だっただろう。

ただ実際この失敗は曲よりも演奏が甚だしくダメだったという、
よくありがちな理由だったという。

また脚本がよくなかったからという説もあるけど、
正直この種の作品としてそこまで酷いという印象は無い。

ただ当時イタリア最高の脚本家といわれた、
フェリーチェ・ロマーニが脚本を担当していことで、
例えその台本に不満があったとしても、
若きヴェルディにはそれを声を大にしては言い辛かったかもしれない。

ただもし初演時にこのシモネット盤で聴かれたような、
聴いていて思わずわくわくするような躍動感みなぎるものだったら、
はたして悲惨な失敗を作曲者が経験し、
この作品もまた失敗作の烙印を押されただろうかという気がする。


ヴェルディは二年後に「ナブッコ」で大成功を収め、
再度大作曲家への道を歩み出したが、
この「一日だけの」は、
一説にはその後の再演では好評だったらしいものの、
今でもあまり顧みられる事はない状況が続いている。

しかしこの曲は面白い。

ヴェルディとしては異例の、
レチタティーヴォ・セッコがあるし、
(この盤では録音のせいかまるでリュートのように聴こえる)
二組のカップルはちょっと「フィガロの結婚」わ思わせるけど、
もうちょっといろいろ入り組んだ設定となっている。

また舞台設定が、
1733年に起きたポーランド継承戦争のきっかけのひとつになった、
スタニスワフ・レシチニスキのポーランド帰還がベースになっているが、
それが影を落とすような深刻なものはここにはない。
(主人公は深刻だったかもしれないが)

多少脚本的に無理が通れば道理が引っ込む的な部分があるようだけど、
この当時の喜劇系オペラにはそういうのは日常茶飯事だし、
自分はけっこう無頓着なので個人的にはあまり問題視していない。

あとこの作品、
喜歌劇にしてはかなり劇的というか生真面目な部分があるようにも感じられ、
くだけた雰囲気や甘味さというのが、
他の作曲家の喜歌劇に比べるとじつはあまりない。

そういう意味ではけっこう指揮者や歌手にとって手強いかもしれないし、
演技の上手い人が要所にいないとかなりつまらないことになるような、
そんな感じもしてしまう。

初演の時の失敗はじつはそのあたりにあったのではないかと、
自分は以上の事から今現在そういう意見をもっている。

ただこのシモネット盤のようにそこそこの面子が揃うと、
かなり聴き応えのある面白い物にもなることも確か。

一度実際に聴いてみたいけど、
最近の演出は自分にとって生理的に合わないので、
それを考えると演奏会形式のだとありがたい。


といったところをダラダラと書きました。

もし機会がありましたら、
一度お聞きになってみてください。

以上で〆。


尚、この演奏は慣例的なカットがあるようですが、
自分は他にもってないので詳しくは分かりません。

シモネット盤の演奏時間は、
第一幕が約62分、第二幕が約40分です。

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サンフランシスコ人

「歌手にブルスカンティーニがいるという事と....」

ブルスカンティーニ....

http://archive.sfopera.com/reports/rptOpera-id935.pdf

サンフランシスコ歌劇場に登場しました....


by サンフランシスコ人 (2019-07-04 02:04) 

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